前日に、稲子湯から本沢温泉、夏沢峠、硫黄岳に登って夏沢鉱泉へ。

20180210tengudake-021

本日は、夏沢鉱泉から、天狗岳に登り、中山峠経由で稲子湯まで戻る、雪山縦走だ。


<天狗岳のアクセスやコースタイムについては、過去記事参照>
 八ケ岳 天狗岳(冬山)

夏沢鉱泉の美味しい夕食をいただいて、布団には山小屋で配ってくれる湯たんぽ。
すっかり心地よく眠らせてもらって、朝食を済ませ、外に出ると、この景色。

20180210tengudake-001

すっかりテンションもあがり、装備を整えて、お世話になった夏沢鉱泉を後にする。

20180210tengudake-002

昨日下ってきた道を、ずんずん登り返し、

20180210tengudake-003

20分ほどでオーレン小屋。

20180210tengudake-004

さらに雪道を進み、

20180210tengudake-005

しばらくすると、前方がグッと明るくなって、光の海に飛び出す。

20180210tengudake-006

夏沢峠から見上げる硫黄岳。

20180210tengudake-007

いい天気なのだが、上空は風が唸っており、天気予報では晴天はお昼前まで。午後は荒れ模様になりそうなので、先を急ごう。

20180210tengudake-008

トレイルはしっかりしていて、誰もいない雪道を考え事をしながら歩く。

登りきると、前に目指す東天狗岳と、手前には根石岳。

20180210tengudake-009

箕冠山の、三叉路でオーレン小屋から直登ルートで来られた方が数名。
冬期は単独でこのルートには入ってはいけないと、何度も警告看板がでていたので、夏沢峠経由でぐるっと回ってきたのだが、それはそれで、誰もいない静かな雪のトレイルを満喫できてよかった。

ここでストックをピッケルに持ち替え。
根石山荘付近から、根石岳、東天狗岳の稜線一帯の強風域に備える。

箕冠山の森から前方を見ると、山荘から登山道にかけて、完全に雪が吹き飛ばされているのがよくわかる。以前も耐風姿勢をとりながら、なんとか突破したことのある風の通り道だ。

20180210tengudake-010

何度か突風的な強風によろめきながら、根石岳にとりつき、サクッと頂上へ。

20180210tengudake-011

ここも雪煙が耐えないほど風が強く寒いので、逃げるように根石岳の下りにかかる。
下っている途中はあまり余裕がなく、振返った根石岳。

20180210tengudake-012

そして、本日のハイライト、東天狗岳への登りにかかる。

20180210tengudake-013

強風の中、アイゼンを効かせてグイグイと登り、

20180210tengudake-014

岩と雪のミックス帯を超えると、東天狗岳の最後の登りが見えてきた。

20180210tengudake-015

最後の頂上直下の鉄の桟道にアイゼンをひっかけないよう慎重に通過して

20180210tengudake-016

雪に埋もれた鎖場を登りきる。

20180210tengudake-017

東天狗岳山頂。

20180210tengudake-018

真っ白な西天狗岳。

20180210tengudake-019

振返ると、根石岳の向こうに、八ヶ岳の盟主、赤岳と阿弥陀岳。

20180210tengudake-020

気持ちのいい山頂からの眺めにしばしうっとり。
しかし、風は強く、カラダが冷えてきたこともあって、東天狗岳山頂を後にする。

20180210tengudake-021

下りで一番急な下降ポイント。

20180210tengudake-022

いつもなら、ここにはしっかりとしたトレースと足場があるのだが、本日こちら側から登ってきた数人はここを迂回して下のほうのルートを登ったのか、足場がない。

ずぶずぶと沈んで滑りそうな雪を、騙し騙し、ピッケルを深く差し込んで確保しながら、下降。

ちょっとビビりながらも、無事稜線を通過し、中山峠に到着。

20180210tengudake-023

ここから、みどり池に向かって下るのだが、下り始めがかなりの傾斜で、ルートはあるのだけど、ずぼずぼと足が沈み、カラダごとずり落ちる。

20180210tengudake-024

ここさえかわせば、あとは静かな森の中の雪のトレイルをゆったりと下るだけ。

20180210tengudake-025

強風帯の稜線と、急下降のヤマ場を越えたので、再び考え事をしながら歩く。


あれも、中山峠から稲子湯に下っていく、この道だった。
 稲子湯~ニュウ~東天狗岳~みどり池~稲子湯


4年前の秋。
私の組織は、20名あまりから、たった5人になった。

会社から「それくらいの仕事でしかない」と宣告を受けたあの日から臥薪嘗胆。
新しいプロジェクトに立ち向かって、成果を上げ続け、将来性のある仕事だと経営トップからも認められ、昨年の4月には一気に40人近くの部署になった。

その寄せ集めた人材を、左手では半年間の徹底的な育成で年内になんとか仕事を回せるレベルに引き上げ、右手で経営から求められる成果を矢継ぎ早に上げて、さらに業容を拡大しようとしている。
我々の目指すビジョンに共鳴してくれた幾人かの社外のプロや、社内にも増えた共感者とともに、この春には何割増しかの陣容になる。

その一気に拡大する組織を、どう形作って、どんな戦略で再びブレイクスルーさせるのか。
それを考えるために3日間冬山に入ったのだ。

いつしか、中山峠からの急斜面も緩やかになり、しらびそ小屋に到着。

20180210tengudake-027

すでに、お昼近くなので、西の空の天気は崩れ出している。

20180210tengudake-028

サクッと行動食でティータイムをして、再び歩き出す。

20180210tengudake-029

2日間考え続けていた、仕事の3つの課題に、このトレイルで解決策がスパッと浮かび、別々の問題に思われていたものが互いに関連して、整理され、頭の中できれいに統合された。

これだ!

思わず叫びたくなるような解決策に、ひとり悦に入り、忘れないうちにと歩を早める。

いつも山でこういう解決策が浮かぶのを不思議に思っていたのだが、最近この謎が解けたのだ。

先日、やはり冬山で読んだこの本。


20180218goodrest-001

もともとは、昨年の組織拡大準備でしばらく山にも行けず、ほとんどの休日を仕事に費やしていたときに手にとった本。シリコンバレー式 よい休息
「休まなくちゃ」と思って買ったのだが、結局読めたのは12月。

シリコンバレー式、的なタイトルにちょっと眉唾モノかも、と思っていたのだが、その中に書かれていたのは、とっても意外な話だった。

「休息は活動である」

その一言に、まず天からの啓示を受けたような衝撃。

この本、単なる休息の推奨本ではなく、なぜ偉業を成し遂げた人たちが、「休息という活動」をつかって、課題を解いたり、ブレイクスルーできるアイディアを生み出したり、創造的な作品を創りあげたりできたのか、を解き明かしている。

「歩く」や「山に登る」もその中の一つで、私のように課題を考え続けながら登っているときに、危険な状況や全神経を集中して登攀するような時間がはいると、考え続けていた頭は一旦思考を停止し、今度は脳の他の部分で潜在意識がそれを考え続けるという。

なので、今まで急峻な雪山で全神経を集中させてトラバースした稜線突破や、腰までのラッセルでヘトヘトになるような雪山の後に、スパッと解決策が浮かんできたのだ。

長年の疑問が解けた。


そんなことを考えているうちに、稲子湯に到着。

20180210tengudake-030

さて、あとは、3つの課題の解決策をサクッと手帳に書きとめて、稲子湯の湯船にゆっくりと浸かりますか。